タイM&A支援くん
ガイド

タイで会社を買収する流れ【6ステップ】期間・必要書類・注意点

タイM&Aの全体像――6ステップで3〜6ヶ月

タイで会社を買収する標準的なプロセスは6ステップです。スムーズに進めば3ヶ月で成約できますが、DD問題や交渉の長期化で6ヶ月〜12ヶ月になるケースも珍しくありません。

各ステップの期間・担当・必要書類・注意点を順に解説します。


Step 1:方針策定(期間目安:1〜2週間)

このステップでやること

タイM&Aで失敗する最大の原因は「目的が曖昧なまま動き出すこと」です。まず以下の3つを明確にします。

① 進出目的の整理

  • 生産コスト削減(タイ製造業の取得)
  • 販路・顧客基盤の獲得(タイ国内市場へのアクセス)
  • 技術・ノウハウの取得(特許・ブランド・人材)
  • ASEAN展開の拠点構築(タイを起点とした周辺国展開)

目的によって対象業種・求める企業規模・許容できるリスクが変わります。

② 予算設定 取得費用だけでなく、DD費用・統合コスト・初年度の運転資金も含めた総予算を設定します。取得費用の30〜50%を追加コストとして確保するのが安全です。

③ 対象業種・エリアの絞り込み タイの産業集積エリアは業種によって異なります。製造業はEECエリア(チョンブリ・ラヨーン・チャチェンサオ)、サービス業はバンコク都市圏が中心です。

必要書類・準備物

  • 会社概要・事業計画書(日本語・英語)
  • 予算承認ドキュメント(社内)
  • 投資委員会・取締役会の決議(上場企業の場合)

Step 2:候補企業の探索(期間目安:1〜3ヶ月)

情報源と探索方法

候補企業の発掘は、M&Aの成否を左右する最も難しい工程です。タイ語での情報収集・現地人脈が必要なため、専門家の活用が不可欠です。

主な情報源

情報源特徴費用
M&A仲介会社のネットワーク売却意向企業へのアクセスが早い成功報酬型
タイM&AプラットフォームFusionタイ語・英語のマッチングサービス月額数万円〜
商工会議所ネットワークタイ日本人商工会議所(JTCC)に約1,700社加盟会費年間数万円
現地銀行紹介三菱UFJ銀行バンコク支店等が売却希望企業を紹介無料(融資獲得が前提)
直接アプローチ対象企業に直接打診人件費のみ

ロングリスト→ショートリストのプロセス

20〜50社のロングリストから、以下の基準でスクリーニングします。

スクリーニング基準

  1. 外資比率規制への適合性(FBA・BOI)
  2. 財務健全性(売上高・利益率・有利子負債比率)
  3. 買収価格の合理性(EV/EBITDA 4〜8倍が中小企業の目安)
  4. PMIの難易度(日本語対応の有無・経営者の協力姿勢)
  5. 業種の成長性

スクリーニング後のショートリストは3〜5社に絞ります。


Step 3:初期交渉・NDA締結(期間目安:2〜4週間)

NDA(秘密保持契約)の締結

ショートリスト企業への打診後、関心を示した企業とNDA(Non-Disclosure Agreement)を締結します。タイのNDAは英語・タイ語の二ヶ国語版が一般的です。

NDA締結前に共有できる情報:会社名・事業概要・大まかな財務規模 NDA締結後に開示される情報:詳細財務情報・顧客リスト・技術情報・従業員情報

LOI・MOUの締結

基本条件(価格帯・取引スキーム・DD実施可否)で合意したら、LOI(Letter of Intent:意向表明書)またはMOU(Memorandum of Understanding:基本合意書)を締結します。

LOIに含めるべき主要項目

  • 取引スキーム(株式取得・資産譲渡)
  • 想定取引価格・算定根拠
  • DD実施期間・費用負担
  • 独占交渉期間(Exclusivity Period:通常30〜60日)
  • 守秘義務・情報管理

注意点:LOI・MOUは原則として法的拘束力を持ちません(Exclusivity条項・守秘義務条項は例外として拘束力を持たせることが多い)。しかし日本企業と異なり、タイ側は「MOUに署名した=取引確定」と誤解するケースがあります。文書の法的効力について事前に明確化することが重要です。

必要書類

  • NDA(英語・タイ語バイリンガル版)
  • LOI/MOU(英語版・タイ語版)
  • 初期財務情報リクエストリスト

Step 4:デューデリジェンス(期間目安:1〜2ヶ月)

DDの全体設計

DDはM&Aのリスク評価工程です。4分野を並行して実施します。

法務DD(3〜6週間)

  • 法人設立・株主構成の確認(DBD登記情報と照合)
  • 係争案件・罰金・行政処分の有無
  • 主要契約(賃貸借・取引先・ライセンス)の確認
  • 外資規制適合性(FBAリスト確認・BOI状況)

財務DD(4〜8週間)

  • 過去3〜5期の財務諸表(タイ会計基準TFRS)分析
  • 銀行通帳・税務申告書・財務諸表の3点突合
  • EBITDAの正常化調整
  • 運転資本・キャッシュフローサイクルの分析

税務DD(3〜6週間)

  • 法人税(税率20%)・VAT(7%)・源泉税の申告状況
  • タイ歳入局査察リスク(過去5年遡及可能)
  • 移転価格・グループ内取引のリスク

労務DD(2〜4週間)

  • 雇用契約・就業規則の確認
  • 外国人ワークパーミット(WP)状況
  • 未払い残業代・社会保障基金(SSF)の滞納有無
  • キーパーソンの雇用条件・離職リスク

DDチェックリスト(売主へのリクエスト資料)

売主に開示を求める書類リストです。

法務関連

  • 会社設立証明書(Certificate of Incorporation)
  • 株主名簿(Shareholder Register)
  • 取締役会議事録(直近3年)
  • 主要契約書一式
  • 訴訟・仲裁関連書類

財務関連

  • 監査済み財務諸表(直近3〜5期)
  • 未監査管理会計資料
  • 銀行通帳コピー(直近2年)
  • 売掛金・買掛金明細

税務関連

  • 法人税申告書(直近5年)
  • VAT申告書(直近3年)
  • 源泉税申告書(直近2年)

労務関連

  • 従業員名簿・雇用契約書
  • ワークパーミット・ビザ一覧
  • 社会保障基金(SSF)納付記録

Step 5:最終交渉・契約締結(期間目安:2〜4週間)

DDを踏まえた価格再交渉

DDで問題が発見された場合、以下の対応方法があります。

  • 価格減額:発見されたリスク相当額を取引価格から控除
  • 表明保証:問題項目について売主が補償責任を負う条項を追加
  • エスクロー:代金の一部(10〜20%)を一定期間エスクロー口座に留保
  • 取引中止:重大なリスクが発見された場合の撤退判断

SPA(株式譲渡契約)の主要条項

SPA(Share Purchase Agreement)は取引の最終合意書です。英語・タイ語のバイリンガル版で作成します。

主要条項

  1. 取引対象:譲渡株式数・比率・取得価格
  2. クロージング条件(Conditions Precedent):外資規制クリア・BOI承認等
  3. 表明保証(Representations & Warranties):売主の財務・法務・税務に関する保証
  4. 補償条項(Indemnification):表明保証違反時の損害賠償
  5. 競業避止義務:売主のポストM&A競業禁止(1〜3年間)
  6. 準拠法・管轄:タイ法・タイ裁判所が標準

Step 6:クロージング・PMI開始

クロージングの手続き

クロージング日(株式譲渡実行日)に以下を同時に行います。

同日実施

  • 株式譲渡代金の支払い(銀行送金または供託)
  • 株主名簿の書換(DBD商務省登記)
  • 取締役会の変更登記
  • 経営権移転に関する通知(主要取引先・銀行・従業員)

株式名義書換の手続き タイ有限責任会社の株式は商務省のDBD(Department of Business Development)に登録されます。名義書換には弁護士費用5〜20万円・期間1〜2週間が必要です。

PMI開始

クロージングと同時に「100日計画」を発動します。PMIの詳細は別記事で解説していますが、最初の100日でやるべきことは以下です。

  • 現地キーパーソンとの面談・リテンション確認
  • 日本本社への報告ライン確立
  • 銀行口座・署名権限の変更
  • 主要サプライヤー・顧客への挨拶訪問

よくある躓きポイントと対策

躓き①:売主の帳簿が不完全

タイの中小企業では、現金主義の帳簿管理・複数帳簿(表と裏)が常態化しています。銀行通帳・税務申告書・財務諸表の3点が揃わない場合はDD期間が延長します。

対策:初期段階で銀行通帳の開示を求める。銀行通帳が出せない売主とは取引しない。

躓き②:FBAの確認漏れ

対象会社の事業がFBA規制対象にもかかわらず、既に外資49%超で運営されている「違法状態」の会社が存在します。買収後に発覚すると是正コストが膨大になります。

対策:LOI締結前に弁護士による外資規制スクリーニング(30〜50万円)を実施する。

躓き③:キーパーソンが離脱

オーナー経営者(売主)の個人的な繋がりで成り立っている事業を買収した後、オーナーが去ったとたん主要顧客・スタッフが離脱するケースがあります。

対策:DDの段階でキーパーソンの特定と、クロージング後の雇用継続条件をSPAに明記する。


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